【2026年義務化】WBGT(暑さ指数)って何? 現場監督と個人が知るべき「命の計測器」の使い方
「気温が30℃だからまだ大丈夫」
その油断が、命取りになるかもしれません。
2025年6月より、企業における熱中症対策の報告体制などが義務化されました(労働安全衛生規則改正など)。
そこで無視できないのが、WBGT(暑さ指数)です。
本記事では、日本ではまだ馴染みの薄いこの指標を、基礎から現場での運用ルールまで徹底解説します。
1. そもそもWBGTとは?
WBGT(湿球黒球温度)を一言で言えば、「人間がどれくらいヤバいかを表す、気温より正確な数字」です。
なぜ「気温」じゃダメなの?
サウナの中(高い湿度)と、砂漠の日陰(低い湿度)では、同じ気温でも「死にやすさ」が違います。WBGTは以下の3要素をミックスして計算されます。
湿度 (70%)
一番重要! 湿度が高いと汗が乾かず、体温が下がらないため、比重が最も重くなっています。
輻射熱 (20%)
直射日光や、熱くなった地面・壁からの照り返しです。
気温 (10%)
意外なことに、気温の重要度はたったの1割です。
2. 危険レベルと「着衣補正」の罠
厚生労働省の基準では、以下の値をデッドラインとしています。
| WBGT値 | 警戒レベル | 現場でのアクション |
|---|---|---|
| 31以上 | 危険 | 原則作業中止。特別な対策(水冷服など)がない限り動いてはいけない。 |
| 28〜31 | 厳重警戒 | 激しい運動は中止。ファン付きウェア必須領域。 |
| 25〜28 | 警戒 | 定期的に水分補給・休憩。 |
上記の基準は「軽装」の場合です。装備によってWBGTに数値を足す必要があります。
- 長袖作業服: +1℃〜2℃
- 不織布つなぎ(防護服): +3℃〜5℃
- 雨合羽・カッパ: +5℃以上
3. JIS規格適合? 測定器の選び方
「Amazonで安いのを買えばいい」は間違いです。現場の命を預かるなら、信頼できるものを選びましょう。
JIS B 7922:2023(クラス1.5以上)を選べ
JIS規格に適合した「黒球付き」のモデルが必須です。黒球がない簡易測定器は、直射日光の影響を正しく測れません。
推奨機器の例:
- タニタ 黒球式熱中症指数計 (信頼の定番)
- A&D 環境温湿度計 (プロ現場でのシェア高)
4. 数値別・クールウェア運用マニュアル
WBGTの実測値を元に、どのような装備を選択すべきか。現場運用の一例を提案します。
WBGT 25〜28
「ペルチェ or 7.2Vファン」
まだ余裕がある段階。ペルチェで首元を冷やすか、通常の空調服で対応可能。
WBGT 28〜31
「18V以上ファンウェア」
汗が止まらなくなる領域。強力な風で強制的に気化させる必要があります。
WBGT 31〜
「水冷服 + ファンウェア」
風だけでは熱風循環になる危険領域。氷水で直接血液を冷やす「水冷服」とのハイブリッド運用が必須。
まとめ:数値を共有し、チームで守る
WBGT測定器を現場の見えやすい場所に置き、「今の数値」を全員が知っている状態を作ることが、最強の熱中症対策です。
管理者は数値を記録し、作業員は数値に合わせて装備を変える。
この当たり前のサイクルを、2026年のスタンダードにしていきましょう。
5. 現場管理者用チェックリスト
- 今日の予想最高WBGT値を確認し、全員に周知したか?
- 作業員の体調(睡眠不足、二日酔い)を顔色で確認したか?
- 熱中症の緊急連絡網(病院、救急)は提示されているか?
- WBGT測定器の電池は切れていないか?
- 休憩所のクーラーや飲料水は確保されているか?
よくある質問 (FAQ)
6. 当サイトでのWBGT計算ロジックについて
当サイトのヘッダーおよびトップページで表示している「現在のWBGT値」は、以下のロジックに基づいて算出されています。
データ出典
- 気象データ: 気象庁 AMeDAS (アメダス) の最新観測データ(気温、湿度、風速、降水量、日照時間)
- 更新頻度: リアルタイム(気象庁のデータ更新に準拠)
計算方法 (推定式)
環境省「熱中症予防情報サイト」等で参照される以下の近似式を用いて計算しています。
🏠 屋内モード (日射なし)
WBGT = 0.725 × 気温 + 0.0368 × 湿度 + 0.00364 × 気温 × 湿度 - 3.246
※ 全天日射量を0として計算。風速の影響は考慮していません。
☀️ 屋外モード (日射あり)
WBGT = 0.735 × 気温 + 0.0374 × 湿度 + 0.00292 × 気温 × 湿度 + 7.619 × 日射量 - 4.557 × 日射量² - 0.0572 × 風速 - 4.064
※ 現在の日照時間と天候(降水有無・時間帯)から日射量(kW/m²)を推定し、風速冷却効果を加味しています。
- あくまで「推定値」です: 黒球温度計を用いた実測値ではありません。
- 局所的な環境差: アメダス観測点と、実際のあなたの現在地(ビル影、アスファルト照り返し等)では、環境が大きく異なる場合があります。
- 夜間の屋外: 日射量が0となる夜間などは、風がある分、屋内よりも数値が低く出ることがありますが、これは計算式上正しい挙動です。
命に関わる判断には、必ず現場の実測値を使用してください。
安全管理も「装備」の一つ
適切な計測と、適切なウェア選びが命を守ります。